デモテープを抱いてレコード会社に飛び込み

高校生の時、ラジオカセットで曲をテープに吹き込み、デモテープを作った。自信があった。いい曲だと思った。これを聴いてくれたら、レコードを作ってくれると、真剣に考えた。そして新潟という田舎から、鼻息を荒らげて東京に向かった。目指すは発足したばかりのフォーライフレコード。フォークシンガー4人で立ち上げたレコード会社だ。当時は携帯・スマホもなく、地図アプリも使えなかったが、住所だけを頼りに、どうやってたどり着いたのだろう。ビルの前に立ちすくむと、さすがに足が震えた。「ええい、どうにでもなれ」と覚悟して、自動ドアをくぐっていった。受付には、都会のお姉様風の人が立っていた。私の姿を捉え、「田舎者が何をしに来たのだ」と怪訝そうな表情をした。私は「このテープを聴いてください」と、デモテープを差し出した。私以外にも、同じような若者が大勢いるのだろう。慣れた様子で私をあしらい、受付できないことを告げられた。交通費は無駄になったが、自分の行動力に満足していた。sumito17歳、ニキビの似合う少年だった。(sumito)
今日のBGM:歩道橋