音楽と私(20)

最終回です。作曲ソフトで伴奏を作れるようになったら、また他人に聴いてほしいという欲求が頭をもたげました。今度はもっと曲らしくなったのだから、評価も高いだろうと期待しました。そこで、職場の仲間たちにCDを作って配布しました。今度はいい反応でした。「曲が作れるなんてすごい」「この曲がよかった」「プロになれるんじゃない」と、お褒めの言葉の数々(社交辞令とも知らず)。ここで、私の頭にスイッチが入りました。昔の夢を思い出したのです。そう、音楽で生きていくという、あの夢を。私は病気で仕事を休んだことや、上司にはむかったことなどで、出世の道からは外れていました。また、自分の考えが仕事に反映されないことを、腹立たしく感じていました。まだ、定年までは3年ありましたが、私は仕事を辞め、残りの人生を音楽に賭ける決断をしました。家族や知人からは猛反対を受けました。当たり前です。黙って働いていればある程度の収入が担保されています。歌を唄っても一文にもなりません。でも、ここで我慢をしてイヤイヤ仕事をしても、私は一生後悔したことでしょう。あのとき音楽を選択していればどうなったのだろう、もしかしたらうまくいったかもしれない、と。タラレバの世界は何でもアリです。でも、ここで音楽を選択し、自分にできることを全てやりつくす、必死になってやってみて、それでもだめなら、そこであきらめがつくのかなと思います。自分でもバカな選択をしたかなと思います。でも、不思議と将来自分が不幸になるというイメージがありません。今まで、いろんなことがあっても、とりあえずここまで生きてきた。これからも、いろいろなことがあるだろうけれど、なんとかなるさと呑気に構えています。自分の力だけでは前に進みませんが、いろいろな人に支えられながら、一歩でも二歩でも足を進めていくことができたらいいなと考えています。どうか、これからもご支援、ご協力をお願いします。(sumito)